「薄紙における裏抜けの実態~原因と対策について~」

「薄紙における裏抜けの実態~原因と対策について~」

みなさま、こんにちは!

最近、薄い紙のノートをうきうきで購入していざ使ってみたら、表に書いた文字が裏から見えてしまって

結局、表も裏も見えづらくなって落ち込んだこえだです。

これは、ボールペンのインクが透けてしまった例ですが、薄紙だと印刷にも起こりうるトラブルです。

この現象を「裏抜け」といいます。

あらためて簡潔に説明すると「裏抜け」とは表面に印刷したインキや文字が、紙の裏側から透けて見える現象を指します。

特に、50ℊ/㎡以下の軽量紙では顕著で、デザインの再現性にも大きく影響します。

というわけで今回は「薄紙における裏抜けの実態~原因と対策について~」です

このコラムでは、その「裏抜け」の原因と実務的な対策を書いていこうと思います。

1.薄紙は「空隙率」が高いためインキが沈み込みやすい

そもそもどうして薄紙は裏抜けが発生しやすいのでしょうか?

いくつか原因を探ってみたのでご紹介します。

薄紙は普通紙に比べて「空隙率」が高いためインクが沈み込みやすいということです。

 「空隙率(くうげきりつ)」とは、紙の体積に対する、繊維と繊維の間の空気の隙間が占める割合のことです。

と、文章にしてもわかりづらいとは思うのですが、、、

紙は、植物繊維(パルプ)を絡み合わせて作られるため、必ず繊維と繊維の間に隙間が存在するのです。

薄紙の場合は繊維量が少なく、構造的にスカスカなためインキを保持する層が薄くなっています。

そのため、

・インキが表面から内部へ素早く浸透される

・光が紙を透過しやすくなる(裏面からインキが透けて見える)

という現象が発生します。

2.薄紙のインキセットの速さが裏抜けを助長している

薄紙で裏抜けが起こりやすい理由のひとつがインキセットです。

インキセットとは、印刷インキ中の溶剤が紙の中に吸収され、顔料が紙表面に定着するまでのプロセスのことを言います。

オフセット印刷では、

・吸収乾燥

・酸化重合乾燥   の2つで乾きます。

薄紙ではこの2つのうち、吸収乾燥が主になります。

先程ご説明した通り、薄紙は繊維の量が少なく、空隙率が高いため、インキ中の油分が一気に紙の内部へ吸い込まれます。

したがって、表面でインキが止まらず、内部へ潜り込みすぎる→顔料が紙内部に沈み込むことで、表面濃度が落ちる→光が紙を透過しやすくなり、裏面に影として透ける(裏抜け)となります。

つまり、セットが速い(吸収が速い)=裏抜けが強くなる ということになります。

3.色が裏抜けを強調させる

色の濃度も裏抜けの有無に関わります。特にK100やC100などの濃色は注意が必要です。

同じ紙でも淡色と濃色では裏抜けの差が出やすいのが薄紙の特徴です。

ここまで、薄紙が裏抜けしやすい原因をお話してきましたが、ではどうしたら裏抜けが起こるリスクを抑えられるのでしょうか?

4.薄紙で印刷したいけど裏抜けが不安!裏抜け対策まとめ

裏抜け対策その1:印刷データのインキ総量を下げる

薄紙への裏抜けを防ぐためにはデータのインキ総量を下げる方法があります。

UCR(アンダーカラーリムーバル)

CMYKのフルカラー印刷で、K(黒)で代用できる部分のC・M・Yを減らしてインキ総量を下げる画像処理のことです。

これを行うことで

・合計のインキ量を減らす

・乾燥しやすくなる

・インキ内部浸透を抑える

といった効果があります。

ちなみに、日本の枚葉印刷機の標準総インキ量は350%程度と言われていますが、薄紙へのTAC値は240~260%が望ましいです。

また、C・M・Yの中でC(シアン)が最も内部浸透がしやすいので一番優先して減らすのを推奨しています。

GCR(グレー・コンポーネント・リプレースメント)

C・M・Yで作っているグレー成分の部分を、極力K(ブラック)に置き換える画像処理のこと。

URCは主に黒に近い部分を置き換えるのに対し、GCRはグレー成分が含まれる中間調から暗部までの広範囲を置き換えます。

これを行うことで、

・インキ総量が大きく減る

・見当ズレが起きにくい

・乾燥が早くなる

・色再現が安定しやすい

といった効果があります。

裏抜け対策その2:湿し水を減らす

薄紙は紙厚が極端に薄いため、紙が水を吸い込む→水分を吸った薄紙は繊維が緩み、密度が下がる→インキが裏面まで浸透しやすくなるというメカニズムが生まれてしまいます。

また、湿し水が多いとインキの乳化が進み、インキの粘度が下がり、紙に入り込みやすくなってしまいます。

これらのことから、紙が弱くなる×インキの粘度が下がる→裏抜けがしやすくなるという二重苦になります。

このようなことを防ぐために湿し水を減らす選択をとる会社もあるのだそうです。

大切な情報を確実にお届けするために

いかがでしたでしょうか?

今回は、薄紙の印刷によく起こるトラブル「裏抜け」について原因と対策についてお話してきました。

薄紙の印刷を手配する不安を少しでも払拭できたらと思います!

上記の対策をしつつ、本機校正で裏抜け具合を確認することを強くおすすめいたします

薄紙の印刷に関して、なにか不安なことがございましたらぜひ東京薄紙印刷にご相談ください!

(文 藤木 柚稀)

藤木柚稀

見た目は華奢で、通称こえだちゃんと呼ばれるも心は大木(たいぼく)

持ち前の明るさとガッツでお客様をハピネスにする特技を持つ

舞浜で犬も歩けば、こえだに当たるという程のディズニー信奉者

趣味はディズニー、カメラ、楽器演奏、一人旅。

我が社の最年少ニューフェイス

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